インターネット広告の規模が初めてマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)を抜いた2021年から「テレビCMはオワコン」のイメージが強いですが、本当にオワコンなのか。ここで今更聞けないテレビCMの仕組みをおさらいしておこうと思います。
テレビCMには3種類存在する
テレビCMには、大きく分けて『タイム』と『スポット』、『SAS』の3種類があります。
それぞれを一言で表すと以下の通りとなります。
- タイム →テレビCMを流す番組と秒数を指定して買う方法。
- スポット →テレビCMを流すエリア・放送局・時間帯・GRPを指定して買う方法。
- SAS →15秒CMを枠を指定して1本単位から買う方法。
テスト的に短期でテレビCMを出稿する場合は、自由にプランを組みやすいスポットがよく使用されます。
テレビCMの枠はどのように買っているのか
「タイム」と「スポット」「SAS」という3種類が存在していることを理解できたうえで、感じることが「枠の限界」なのではないでしょうか。1日24時間の中で、広告を流している時間帯は限られています。その中の枠はどのように売られているのか。また、誰が買っているのか。仕組みが気になります。
テレビCMの枠を買っている広告代理店について
ここで、登場するのが「広告代理店」です。
各テレビ局が用意している「タイム」「スポット」の枠を、広告代理店が購入し、広告主に販売しております。
ここで、疑問に思うのが、「代理店を挟む必要があるのか」という点ですが、一概に言えませんが、以下2点より必要かと思われます。
○テレビ局側から見た視点
直接取引をした場合、支払い能力があるクライアントか分からない可能性がある。
→テレビ局の収入源はCM枠となります。人気の時間帯などはもちろん高く売られており、回収が必至となります。テレビ局の中に代理店の機能をもつものはないので、どの枠をどのクライアントに売るのかを検討することも含め、客観的な判断ができる代理店が必要となります。
○広告主側から見た視点
テレビ局に映像を流すことがよいのかを含め知識がないため、コンサルティングが必要である。
→テレビ局は媒体の1つでしかなく、ネット等の魅力的な媒体がいくつもあります。その中でどのようなものを作るのがよいか。また映像自体もどのようなものを作るのがよいか。客観的な視点が必要となります。
どのように枠を買っているのか
では、実際にどのようにテレビ局の広告枠を購入しているのでしょうか。
テレビCMの放映枠を買うことをバイイングといいますが、先ほど説明した「スポット」「タイム」「SAS」それぞれの枠を事前に購入していることとなります。
ですので、代理店としては、広告主を多く抱え、大量に枠を購入できる体制が整っていれば、枠を安く購入する交渉舞台に立てる可能性が高いです。いわゆる、広告代理店大手の「博報堂」「電通」等がその例となります。
買い付けを行う際に、価格の要因となるのが以下のようなものです。
○視聴率
「放送回数」ではなく、「GRP」という数値を用いております。
あくまで視聴率は予想となりますので、ゴールデン番組で視聴率が高いと予想したものが外れると、割高になってしまうなんてこともあります。
○買い付け時期
買い付け時期も大きな単価決定要因のひとつです。CM放送枠は有限ではありますが、必ず全枠が売れるわけではありません。売れ残った枠には公益社団法人 ACジャパンのCMが放送されます。
○時間帯や曜日
土日など、多くの方が見ると予想される休日は高くなることが多いです。
また、これら以外にもオリンピック等の催し時においては、放送枠を独占契約で取得するなど様々なケースが考えられます。
テレビはオワコンなのか
テレビ枠の仕組みについて、なんとなく理解ができたところで本当にオワコンなのかを、数値的に確認していこうと思います。
ここまでの仕組みの中で、「テレビ局の収益≒テレビCM枠の値段」ということが仮定できるので、まずは「日本テレビ放送網」さんの売上を見てみようと思います。
2022.03 300,729(百万円)
2021.03 286,314(百万円)
2020.03 307,271(百万円)
2014.03 282,973(百万円)
YouTube等の動画サービスが伸びてきた2015,6年の数値と比べて、安定的に収益を得ていることが分かります。
全体的な視聴率は減ってきている可能性がございますが、その分今までテレビ広告を使用しなかった企業の参入や、ブランドイメージ。使い勝手のよさなどからそこまで大きく変化しているとは言えないのかもしれません。
「テレビがオワコン」と呼ぶには、まだ時期尚早である可能性は否定できないと思います。
また、経産省調査が広告業全体の売上高の約7割を占める上位企業を対象に毎月実施している調査では、22年度の広告業の売上高は前年度比2.8%減で、このうちネット広告は同2.8%増、テレビ広告は同6.2%減だったそうです。(2023/10/24調査)
衰退減少にあるとはいえ、ネット広告の台頭が著しいだけで、テレビは現状維持もしくはゆるやかな減少程度なのだと思います。
まとめ
テレビの枠や買い付け・仕組みについて簡単におさらいできましたでしょうか?
世間一般的に、「テレビはオワコン」のイメージが強いですが、数字や仕組みを知ると感じることもあるのではないかと思います。
何かの参考になれば幸いでございます。